裁判所 外観

競馬の外れ馬券の税金めぐる2大裁判と判決

1:最高裁2015年に続き2017年「外れ馬券も経費として認める」

税金 イラスト
競馬にも税金が発生し、税金をめぐるトラブルは昔から存在します。
その中でも特に注目されている問題が、外れ馬券についてです。

1レースで馬券が的中したとした場合に、的中したのは3連単の1点でも複数点を購入しているケースがほとんどです。
的中した馬券は100円ですが、実際に購入した金額は100円以上になっていることが多いでしょう。
そういった的中した馬券以外の外れ馬券について、その扱いが競馬の税金において注目されているのです。

2015年に約1億4000万円の稼ぎがあったのに申告していなかったとして、所得税法違反で告発された男性の最高裁がありました。
この最高裁では「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」すなわち雑所得と認定し、外れ馬券も経費として認められました。
それにより、脱税額は約5億7千万円から約5,200万円に減少したのです。

さらに、2017年にもおよそ2億円近い追徴課税を言い渡されて裁判になったケースがありました。
ここでは、確定申告はしていたものの、外れ馬券を必要経費として控除していたため追加課税を言い渡される結果になったのです。
ただし、結局は雑所得として認められたので、外れ馬券が経費として認められています。

今後も、外れ馬券を経費として認めるのか、最高裁での判決に注目が集まっています。

1-1:裁判の争点は払戻金が「一時所得」か「雑所得」か

税金 計算
外れ馬券を経費として認めるのかについては、払戻金が「一時所得」なのか「雑所得」なのかによって変わってきます。
一時所得の場合には当たり馬券の購入金額を払戻金から差し引く計算で税金が算出され、外れ馬券は差し引くことができません。

しかし、雑所得の場合は、外れ馬券を経費として払戻金から差し引くことができるため、支払わなければならない税金が少なくなるのです。
そのため、裁判での争点は、払戻金が「一時所得」なのか「雑所得」なのかになります。

馬券の購入の仕方によっても、一時所得と雑所得の考え方が変わってきます。
つまり、確実にどちらと言えないのが問題となっていて、裁判でも多くの競馬ファンが注目しているのです。
今後も、払戻金が「一時所得」か「雑所得」のどちらになるのか、裁判での争点となることが予想されます。

1-2:国税庁2015年判決を踏まえ一時所得の例示に関する通達を改定

弁護士 バッジ
前述のとおり、2015年に最高裁で「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」すなわち雑所得と認定し、外れ馬券も経費として認められたケースがありました。
この判決を踏まえ、国税庁では一時所得の例示に関する通達を改定しました。

改定の内容を簡単にまとめると、雑所得とされるのは2015年判決のように競馬予想ソフトを使うなど特殊なケースでのみとすることにしたものです。
営利を目的とする継続的行為から生じた所得となれば雑所得になるのですが、ソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいて購入することが条件という文言が記載されています。

ところが、2017年の最高裁のケースでは、追加課税を言い渡された男性はソフトを使用していませんでした。
それでも、男性の一連の行為は継続的行為といえ、雑所得として認められていることになります。
この結果から一時所得の例示に関する通達の一部が改定されたものの、現在も一時所得と雑所得の線引きがあいまいになっているのです。

1-3:税務局の一時所得の原則に変更なし

税務署
ここで勘違いをしてはいけないのが、競馬の払戻金は一時所得だというのが原則である点です。
2015年や2017年の最高裁で雑所得として認められてはいますが、ほとんどの競馬ファンの払戻金は一時所得になります。

雑所得は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」なので、競馬で普通に馬券を買っていることは営利を目的とした継続的行為とは言い難いのです。
そのため、普通に馬券を購入して一喜一憂している場合には、払戻金は一時所得として考えられます。

原則として、競馬の払戻金は一時所得であるという点はしっかりと覚えておいてください。

2:競馬の税金裁判の鍵は「営利を目的とする継続的行為」かどうか

裁判官
競馬の税金における最高裁でのポイントは、「営利を目的とする継続的行為」かどうか
です。
雑所得であるためには、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として認められる必要があるからです。

競馬の払戻金は原則一時所得として考えられていますが、2015年と2017年の最高裁で「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として認められました。
これらは特殊なケースとして考えらますが、いずれも独自のノウハウによって継続的な利益を得ていたのです。

行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間、その他の状況等を総合考慮し、営利を目的とする継続的行為から生じたものと認められるかどうかが判断されます。
「営利を目的とする継続的行為」と認められたときには雑所得となり、外れ馬券も経費として認められるのです。

3:競馬の税金をめぐる2大裁判と判決

裁判 ハンマー
競馬の税金をめぐる大きなトラブルとして、2つの裁判がありました。
どちらも大きくマスコミに取り上げられ、注目していた競馬ファンも多かったのではないでしょうか。
競馬の税金が気になるという方は、この2つの裁判についてしっかりと理解しておくことが大切です。

裁判となってしまった理由などの把握しておくと、税金によるトラブルを避けることができるかもしれません。
それでは、競馬の税金をめぐる2大裁判について、その判決を紐解いていきます。

3-1:2015年3月10日「大阪男性(通称:卍)予想ソフトで約1億4千万円の脱税裁判」

指摘
まずは、2015年の裁判事例について見ていきましょう。
2015年3月10日に行われた最高裁では、馬券を購入して多額の払戻金を得たにも関わらず確定申告をしていませんでした。
そのため、所得税法違反に問われ裁判となった事例です。

起訴された男性は、約1億5500万円の黒字となり、回収率も104.4%と100%を上回っていました。
こちらについてはとても驚異的な数字で、羨ましいと思っていた競馬ファンも多かったでしょう。
しかし、この男性は全く確定申告をしていませんでした。

所得税約5億7千万円を免れたとして大阪地検特捜部に起訴され、裁判となったのです。

3-1-1:大阪地裁の判決

裁判所
まずは大阪地裁が行われ、払戻金が一時所得か雑所得かが争点となりました。
大阪地裁は、払戻金も営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得と判決します。

本来なら払戻金は一時所得が原則ですが、馬券の買い方が機械的及び網羅的であり、資産運用に変化し営利を目的とする継続的行為として認められたようです。
これにより、外れ馬券も経費として認め、脱税額は起訴された約5億7千万円ではなく、約5200万円にとどまるという判決が出ました。

3-1-2:大阪高裁の判決

大阪高裁でも、営利を目的とした雑所得となり得るという判決になっています。
投資活動まで至っているか否かは問題ではなく、客観的に一連の継続的な馬券購入と認められれば雑所得であると判断しました。

3-1-3:最高裁の判決

そして、注目の最高裁で、最終的に払戻金は雑所得にあたるという判決が出ます。
雑所得に当たるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間、その他の状況等を総合考慮して判断するとの結論でした。

そのため、脱税額は起訴された約5億7千万円ではなく、約5200万円にとどまるという結果になっています。

3-2:2017年「北海道男性、必要経費と認められず約1億9400万円の追徴課税処分」

確定申告書
2015年に続き、2017年も競馬の税金をめぐる注目の裁判がありました。
こちらは北海道の男性が、ネットを介して馬券を購入できるサービスを使って、6年間にわたって利益を得たという事例です。

こちらの男性については確定申告を行っていましたが、雑所得として外れ馬券の購入代金も必要経費として控除していました。
ところが、国税から一時所得であると否認され、およそ2億円近い追徴課税を言い渡されてしまったケースとなっています。

3-2-1:東京地裁の判決

まず東京地裁の判決では、雑所得ではなく一時所得に当たるという判決になりました。
競馬愛好家の馬券購入方法と大差はなく、機械的とはいえないというのが判決の主な理由となっています。

3-2-2:東京高裁の判決

ところが、東京高裁では2015年判決のケースと購入方法に本質的な違いはないと判断されます。
網羅的に購入して利益を上げるという独自のノウハウを利用しているので、一時所得ではなく雑所得に当たるという判決になりました。

3-2-3:最高裁の判決

勝訴
そして注目の最高裁では、男性の一連の行為は継続的行為といえると判断されます。
男性は回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたため、客観的にみて営利を目的とするものであったとし、雑所得として認められています。

4:競馬ファン「競馬の税金はおかしい」の声

裁判
競馬の税金に関するトラブルについては注目度が高く、多くの競馬ファンが「競馬の税金はおかしい」と考えています。
これについては、外れ馬券を経費として認めない考え方が主な理由です。

馬券を当てるために、1点買いをする人はほとんどいません。
特に3連単などの高配当が狙える馬券では、100点以上の馬券を購入することも珍しくないでしょう。

利益を得るために、外れ馬券も必要な馬券だったことになります。
それなのに、当たり馬券のみを払戻金から控除するのはおかしいことです。
「競馬の税金はおかしい」と考えるのは当然のことで、外れ馬券を経費として認めないのは不満が出ても仕方のないことなのです。

まとめ

競馬の税金をめぐるトラブルは、常に注目を集めています。
2015年には確定申告をしていなかった男性が、所得税法違反で告発されました。
競馬でも税金を支払う必要があり、申告をしていないとリスクがあるという点は覚えておきたいところです。

2017年には確定申告をしていたにも関わらず、追加課税で起訴されたケースもあります。
こちらについては、外れ馬券を経費として控除し、申告していたことが理由になります。
最終的には雑所得として認められ、追加課税を支払うことはありませんでした。

しかし、競馬の払戻金は、原則一時所得なので外れ馬券は経費として認められません。
そのため、「競馬の税金はおかしい」と多くの競馬ファンが不満を抱えています。